実家の明日香から王寺町に越してきて、数年ほど経過した約一年半ほど前から、近所のフィットネスクラブに通うようになった。運動不足を痛感するからである。
とはいえ昔から運動は好きで、また大得意で、それも手伝って学生時代を終えて本格的な運動から去った後は、早朝の散歩をしたり、ダンベルを使って筋力トレーニングをしたり、それなりに体を動かしてはいた。
しかしまあ自分で仕事をするようになると、時間管理が容易くなり、その他に割り振られる時間も次第に増えるような想像とはまったく異なった形で、実はどうにも進んで体を動かすのが精神的に負担となり、それがそれほど広くない自宅賃貸マンションで汗を流すとなるとなおさらであり、そんな次第でフィットネスクラブに通うようになったのである。
前置きが長くなったが、朝の散歩をしたり、フィットネスで体を動かしたりする時間はもったいない。いや、運動に割り振る時間がもったいないのではなく、その比較的長時間となる時間を、体を動かすのみで、頭を放置しがちであることがもったいない。よって、カセットや、CDや、最近はアイポッドなどというポータブルプレイヤーを携帯して、常時かけっぱなしにしている。
音楽は聴かない。いやたまには聴くが、ほぼ聴かない。では何をしているかというと、情報を得ているのである。新しい情報を得たり、旧知の情報を確認したりして、色々な物事に対する視点を広くもったり、自分なりの考え方や立ち位置を整理しているのである。結構本気でやっている。
なんだそりゃと思われるかもしれないが、私にとっては非常に大切な時間。運動が楽になるという副次的動機はもちろん満たされるし、何よりも以下において有意義である。
つまり、日常の生活というのは、とりわけ職業生活というのは実務であり、実践であり、きわめて実際的なものなのであり、そして時に試合であり、闘争であり、戦争である。いかに喜びの深い、ゆったりとした、また慣れ親しんだ仕事であったとしても、仕事である限りにおいて、そういった形相を内在させている。仕事が道楽では困るからである。
日常の生活に必要なのは、即役に立つ情報であり技術であり、いわばよく出来た道具である。よく出来た道具は実際的な生活には必須のものである。
しかし、よく出来た道具を日々使用していると、道具を収集したり、道具の細部に興味が入り浸ったり、道具それ自体に価値があるような気がして、自己目的化する流れは、案外世間的にはよく見られる潮流である。それでこそよく出来た道具はなおさら研ぎ澄まされることがあるのだし、そういった世界が必要であるとこを否定するものではないが、それだけでは危険だし、何よりもつまらない。
道具は何のためにあるか。何を実現したいのか。ほかに至る方法はないのか。あらゆる道具が人間の幸せのためにあるとすれば、常に源流に遡って、目的に、位置づけに、大局に、哲学に、それぞれに振り返り続ける努力が必要なのではないか、そう考えるのである。
そこで、である。実際的な日常を離れて、そういった人生の本源的・根源的な、先天的なところに立ち戻る機会を提供してくれるのがこの時間なのである(文学書や哲学書を読む時間に加えて)。どうやって?それはそういった素材を聴くことによって。
さて、現在よく聴いているのは次のようなものである。
1 伊藤洋一の「ビジネストレンド」「ラウンドアップワールドナウ」のpodcasts
住信基礎研究所の伊藤洋一氏が日本の、世界の経済・社会・政治について解説したり主張したりするもの。ロスチャイルド・ロックフェラー的の、グローバルスタンダード的の世界観を、緩やかな形で日本に輸入しようとするとこういった考え方になるのか、という視点で聴いている。
Podcastsはとてもいい。便利である。もっとたくさんの人がやってくれるといい。多少お金を払ってもいい。
2 ソフィアバンク・ラジオ・ステーションのpodcasts(田坂広志氏の部分のみ)
シンクタンク・ソフィアバンクが発信する情報のうち代表者田坂広志氏の哲学的・思想的語り。その当たり前さの奥に潜む凄み、当たり前の論理を紡ぎ出した源泉の深度を感じる。
3 ビデオニュース・ドットコム(とりわけマル激トーク・オン・ディマンド)
ビデオジャーナリストの神保哲生氏と社会学者宮台真司氏が時のテーマに沿ったゲストを交えて議論する。素朴でわかりやすい神保氏と、時に社会学的飛躍をする宮台氏の同居が、訳も無く心地いい。
4 弁護士加藤晋介氏の講義(とりわけ憲法学周辺)
過ぎた日、司法書士試験の勉強と同時に司法試験の勉強をしていた際、辰巳法律研究所という予備校で数十万円分買い込んだ同弁護士講義の教材のうち、とりわけ興味深いのが憲法学や歴史もの(西洋)のそれである。語りも面白いのでたまに聞きたくなる。
5 その他各界の著名人の講話や法話や講演録。
丸呑みはしないが、とても刺激的である。
現代人の時間は非常の忙しさに費消される。年々やることが増えているような気もする。だから、手軽に音源が持ち運べるようになった今、時間を有効活用して、少しでも有意義に生きられたらいいと思う。
以上、数少ないお勧めできる習慣である。
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