ここのところ,年末から年始にかけて読んだ本です。あまり実存的ではありませんが,知的には興味深いものでした。参考まで。

君たちはどう生きるか 吉野源三郎 岩波文庫
昭和に輝く進歩的知識人で,岩波書店の経営にも参画した御大吉野源三郎氏の代表作です。今更どうこういうこともない名著ですが,改めて読んでみて,なんともすがすがしい本だなあと感じます。その文脈が。表現が。
登場人物は主に二人。中学校二年生の通称コペル君と,コペル君に暖かい眼差しをかざし,その成長を見守り,手紙等を用いて事物の意味や評価を示唆し,健全な成長を導くコペル君の叔父さん。
コペル君が経験する象徴的な出来事に際し,叔父さんは自然科学のすばらしさを,社会科学の物の見方を,まさに中学生のコペル君に宛てて,簡易な言葉で伝えます。コペル君はその才能と相まって,どんどん成長をする,,
皆さんもぜひ読んでください。時代を経て,ますます面白い本です。普通の物語として読める,しかしとても奥深い人生の入門書です。

日本人としてこれだけは知っておきたいこと 中西輝政 PHP新書
保守の代表的論客,京都大学の中西輝政氏の新書。新書だけに,その言説がより先鋭的で断定的です。しかし,さまざまな反論があることをそもそも内在し,予想して,あえてこのような本を出されたのではないかと思われます。目次はこんな感じ。論理も表現も新書向けに非常にわかりやすいです。興味ある方はどうぞ。
第一章 歪められた自画像
一 なぜ日本人は戦前を全否定するのか
二 戦後の嘘
三 戦後の悲しき真実
四 戦後六〇年,いまこそ覚醒のとき
第二章 あの戦争をどう見るべきか
一 日露戦争をどう見るべきか
二 日本はなぜ大東亜戦争に突入したのか
第三章 日本人にとっての天皇
一 天皇―世界に類なき君主
二 なぜ日本人は天皇を必要とするのか
三 天皇を戴いて歩み続けるために
第四章 日本文明とは何か
一 戦後日本人を呪縛した「菊と刀」
二 日本文明―この独自なる文明
三 この国の「心のかたち」

サイファ覚醒せよ! 宮台真司・速見由紀子 筑摩書房
首都大学東京の社会学者(社会システム論)宮台真司氏とフリージャーナリスト速見由紀子の共著。対談形式。
人間が人間であるが故に,科学がいくら発達しようともいつもその果て,科学の最先端の向こう側に位置するものがある。すなわち「世界の根源的未規定性」「超越論的なもの」「端的なもの」「名状しがたいもの」「世界の特異点」などと表現される,人知を超える何かのこと。それは世界に厳然と在ります。
これがいつの時代も宗教の対象となり,現代もまたそうです。
さて,この本は,成熟社会であればあるほど,逆説的に人間が希求するその宗教性について,従来型の宗教ではなく,成熟社会に機能的に適合したありうべき宗教性(著者がいうところの「サイファ」)を解き明かしたい,新しい宗教性について論じた宗教書を書きたいとの目的のもとに上梓されたもの。科学の向こう側にある世界の未規定性について,徹底的に科学的に答えようとする二律背反に挑戦しようとするものだ,と冒頭著者は言います。
はたして,本書を一貫して,「サイファ」を取り巻く社会的事実,社会的状況について,いつものように宮台氏の過剰に論理的な社会学的分析が見られます。
しかし,肝心の「サイファ」とはいったい何か,既存宗教に代替しうる宗教性とは具体的に何かということについては語られない。速水氏がまさに科学的にそれを求めようとするのに対し,宮台氏が,そんなに簡単じゃないよ,とむしろ未規定性の未規定性であるが所以を論じるというような内容です。

M2思考のロバストネス 宮台真司・宮崎哲弥 インフォバーン

M2われらの時代に 宮台真司・宮崎哲弥 朝日文庫

M2ニッポン問題 宮台真司・宮崎哲弥 朝日文庫
M2つまり社会学者宮台真司と評論家宮崎哲弥が,月間サイゾーで繰り広げた対論?を語りおろしで書にしたもの。政治・経済・文化その他さまざまな事柄を縦横無尽に独断と偏見で評価し斬り裁く。
リベラリスト宮台氏とコミュニタリアン宮崎氏の対論はときに同調し,時にまったくかみ合わないまま進みます。
ところで宮崎氏はテレビで有名ですが,ブッディストであることを告白しており,自らを「知識人」ではなく「辻説法師」であると断言します。ここには,身勝手なアカデミズムに陥ることなく,世俗にわかりやすく知を説き,現実に社会にコミットしたいという想いが現れているんじゃないか,と個人的には思っています。非常な勉強量であるにかかわらず,俗人にとけこみ,わかりやすくもある稀代の人だと思います。
小難しい議論が好きで,知識のひけらかし?に耐えられる奇特な人?は,ぜひどうぞ。いやしかし非常に興味深いですよ。ぞっとする分析が多々あります。

宮台真司 インタヴューズ 世界書院
上記の宮台氏が2004年までの10年間で語ったインタヴュー記事をまとめたもの。各種媒体に掲載されたものですね。M2が好きな人はどうぞ。
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